【???】
「……くん」

……どこからか、優しい声が呼びかけてくる。

【???】
「……村上君」

……背中には草の感触。照りつける陽光が目を閉じていてもなお眩しい。
そうだ、俺、学校の裏庭で昼寝をしていたんだっけ。

【???】
「ほら、起きなさい……もうすぐ授業が始まるわよ?」

柔らかい手に揺さぶられて、俺はまぶたを開いてみた。

【敏明】
「橘先生……」

声をかけられるまでもなく、漂う香りで誰が来たのかわかっていた。
橘麗香先生。俺の担任にして、憧れの先生。

【麗香】
「こんなところで寝ていると風邪をひいちゃうわよ?」

【敏明】
「ひきませんよ、こんないい天気なんですし……」

【麗香】
「ふふっ、それもそうね……。 本当は私もお昼寝したい気分……」

太陽を背に先生が微笑み、俺の胸に痛みが走る。
なんて綺麗な人なんだろう。俺は先生を見るたびにそう思う。

【麗香】
「授業中に居眠りなんかしないようにね、村上くん」

【敏明】
「しませんよ、居眠りなんて」

【麗香】
「そうかしら? 他の先生からいろいろ話を聞いているんだけど?」

先生の微笑を見ていると、胸の苦しさに耐え切れなくなってしまって……。

【敏明】
「毎時間、先生が授業をしてくれるのなら、絶対に居眠りなんかしないのに……」

……ついつい、呆けた言葉が口から漏れてしまう。

【麗香】
「そうね。私も本当はそうしてあげたいところだけど……」

よかった。先生が微笑で受け流してくれた。

大好きな橘先生。俺にとって初恋の女性。
俺はこんなふうに、ずっと先生と2人っきりで話をしていたかった。

こんなに俺は先生を好きだったのに……。
どうして、先生は俺にあんな仕打ちをしたんだろう?


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